活動紹介 : 交流部会 | 2015/01/31

向島学会の国際交流
ドイツを中心にした海外での取組み

NPO向島学会は、ドイツ第二の大都市・ハンブルク市のアルトナ区オッテンゼン地区の複数のNPOと地区市民交流を続けている。前身の川の手倶楽部の時代を含めると、1991年以来20年以上におよぶ。スペイン・バレンシア工科大学でオッテンゼンのNPOとともに地区交流会議を開催するなど、最近では大学を介した国際交流も行われている。また、ハンブルク市文化局の視察団が向島を訪問する等、海外からの視察も多い。  

ここでは、2008年度以降の海外における向島学会関連の発表展示会や国際ワークショップの概要を紹介する。

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向島との交流拠点をハンブルクにつくる構想の立案(1999年8月19日付け東京新聞)

2008年度 アルトナーレ芸術祭招待参加 ハンブルク市アルトナ区

ハンブルク市アルトナ区のオッテンゼンで毎年6月に開催されるアルトナーレ(die altonale)は50万人以上を集める市民芸術文化祭。地元NPOのMOTTEセンターが中心となり1999年から毎年開催されている。  

向島学会は、そのアルトナーレに招待され、オッテンゼン地区資料館で向島の芸術文化とまちづくりを紹介する展示発表会を行った。写真家の中里和人の向島写真展、向島のアーティスト・住中浩史の作品「路地琴」(雨水利用の水琴窟)に加え、向島のまちづくりを紹介したドイツ語版のポスター10枚を展示し、山本俊哉・守武祐子・伊藤隆祐・藤賀雅人の4名が5時間以上にわたって発表した。2008年6月13日(金)におこなわれたポスターセッションの発表会会場には、約30名の地元関係者やハンブルク・ハーフェン大学の学生等が参加した。

 10枚のポスターの各タイトルは、①アイデアの島=向島、②向島学会、③向島における防災まちづくり、④老朽住宅の建て替え、⑤路地と雨水の活用、⑥まちは百花園、⑦光タワーと観光緑化、⑧まちなかアートイベント、⑨空き家から活動拠点へ、⑩市民交流の国際ネットワーク。  

このポスターセッションで展示したパネル10枚は、その後英語版とスペイン語も作成され、2010年6月にはスペインのバレンシア工科大学でも発表展示会が行なわれた。

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オッテンゼン地区資料館に展示された向島学会のパネルと路地琴(ろじきん)
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向島のまちづくりのプレゼンテーション オッテンゼン市民との交流会

2010年度 バレンシア国際ワークショップ+国際会議EN3BARIOS

2010年6月8日~12日の5日間、スペインのバレンシア工科大学で開催された国際ワークショップが開催され、と併せて、向島学会とオッテンゼンのNPO並びに地元エルカバニャルのNPOの国際会議EN3BARIOSが開かれた。日本やドイツなど8カ国から約80名が参加した。

バレンシア市では地中海沿岸の旧漁村・エルカバニャルを分断する幅員100mの道路拡幅計画が中断する一方、エルカバニャルでは空き地・空き家が増え、問題と化していた。エルカバニャルの建築と街並みには独特の歴史文化が残されており、それらの継承と再生も課題になっていた。そこで、バレンシア工科大学建築学科とオッテンゼンのNPOと向島学会が協力し、集中討議検討を行うことになった。

向島学会からは6名が参加し、国際会議EN3BARIOSでは山本俊哉と長谷川栄子がそれぞれ「東京における道路整備の歴史と市民主体の都市再生」「向島におけるアートプロジェクトと住宅改善」と題して講演した。また、住中浩史が向島の街並みとアート活動を紹介した自作のビデオを上映し、内山史子と末永健治が向島学会参加メンバーによるマッピングワークショップの成果を「Wandering in Cabanyal with a variety of discovery」と題して発表した。さらには、2008年度にドイツ・ハンブルクで発表した向島学会のポスター10枚(スペイン語版)をバレンシア工科大学でも展示した。

これらの一連の記録は、電子書籍"REGENERACION URBANA MEDIANTE EL ENSANCHAMIENTO DE CALLES EN TOKIO" Congreso internacional sobre permanencia y transformación en conjuntos históricos -ACTAS-にまとめられ、2011年に刊行された。

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国際会議EN3BARIOSにおける山本俊哉のプレゼンと長谷川栄子のプレゼン
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国際ワークショップにおける学生達の作業風景 向島学会メンバーの成果発表

2011年度 ドレスデン戦災復興・現代文化交流・建築学生ワークショップ

2011年9月にドイツ東部のドレスデン市で、戦災復興と都市再生を研究している日独双方の建築系学生が集い、ドレスデンの歴史を振り返りつつ、現代の日本文化とドレスデンの都市再生のあり方について理解を深めるために開催された。向島学会が公益財団法人三菱UFJ国際財団の国際交流事業助成を得て参加学生のドイツ渡航費を補助した。
http://www.mitsubishi-ufj-foundation.jp/anken-ichiran_2011_url.html

このワークショップは、向島との地区市民交流を長年続けてきたハンブルク・オッテンゼン在住の建築家・Ulrich Thormann氏が日独交流150周年を記念し、郷里のドレスデンにおいて日独の建築系学生のために企画した。その企画に向島学会理事の山本俊哉・明治大学教授とドレスデン工科大学のNiels-Christian Fritsche教授が呼応し実現に至った。具体的には、向島学会の学生会員らが2011年9月9日〜17日の9日間、ドレスデンの城塞跡地の教会に併設されたセミナーハウスに滞在し、隣接する計画敷地を活用した建築のアイデアを競い合った。

エルベ川を臨む計画敷地は、100年ほど前に日本館とも呼ばれた日本趣味の宮殿施設が建てられていた。その背後の歴史的市街地は第二次世界大戦で壊滅的な被害を受けた。こうした背景をもとに、ドレスデン市都市計画課長のレクチュア等を受けながら、参加学生が各自提案をまとめて、発表した。

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ドレスデン工科大学学生らとの現地調査 教会併設セミナーハウスでの設計作業
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Fritsche教授・Thormann氏による学生提案の講評 計画敷地での参加日本学生の集合写真

2011年度 日独市民・文化交流シンポジウム in Hamburg

2011年11月18日と19日にドイツのハンブルクで、日独交流150周年および向島とオッテンゼンの地区交流20周年を記念したシンポジウムが開催された。主催は向島学会と長年交流しているイースト・ウェスト・ヴィジョン協会と日独地区対話会とハンブルク大学日本学科で、ハンブルク市市長室、文化局、学術研究局が協賛した。

18日にハンブルク大学で開催されたシンポジウムでは、向島学会理事の山本俊哉が「東京向島のまちづくり-スカイツリーはジェントリフィケ-ションか」と題して講演した。続いて、向島学会会員でもある森栗茂一・大阪大学教授が「災害列島から"正常化"への道-神戸の体験、東北の衝撃、大阪市民の変化」と題して講演した。

東日本大震災の被災地支援としてオッテンゼンのNPOがアルトナーレで市民から義援金を集め、向島学会を通して岩手県陸前高田市のNPO陸前高田創生ふるさと会議に送ったが、同NPOの福田利喜・副理事長が訪独し、支援に対して感謝を述べるとともに、明治大学都市計画研究室の学生等とともに、陸前高田市の被災と復興に向けた取組みの報告を行った。当日は、日本国ハンブルク総領事館の小坂節雄総領事(当時)も挨拶のスピーチをした。

翌日の19日は、オッテンゼン地区の市内見学会後、福音ルター教区オッテンゼン・ハウスにおいて「持続可能なまちづくり-ジェントリフィケーションとは?」と題したパネルディスカッションが行われ、前日に引き続き、向島学会理事の山本俊哉と森栗茂一が登壇して、ハンブルク・ハーフェンシティ大学のイングリット・ブレクナー教授の進行により、MOTTEセンターのミヒャエル・ヴェント代表らとディスカッションを行った。

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ハンブルク大学でのシンポジウム オッテンゼンで開催されたパネルディスカッション

2012年度 アルトナーレ芸術祭招待参加 ハンブルク市アルトナ区

2008年に引き続きハンブルク市の市民芸術祭アルトナーレ(die altonale)に招待され、向島学会のメンバーが震災直後から支援活動を続けている陸前高田の復興支援についてまとめたポスターをオッテンゼン地区資料館で展示・発表した。

アルトナーレでの企画に参加したのは、向島学会理事の山本俊哉・藤賀雅人および明治大学都市計画研究室の学生たちで、陸前高田市の住宅再建、高台移転、防潮堤建設などの具体的な課題についての発表は、現地の人々の大きな関心を集めた。パネルは6月15日から19日までオッテンゼン地区資料館にて展示を行った後、ハンブルク・ハーフェンシティ大学でも6月25日から7月13日まで展示された。NPO陸前高田創生ふるさと会議の福田利喜・副理事長もスピーチを行い、そのことが岩手日報と東海新報で報じられた。

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オッテンゼン地区資料館で行われた陸前高田の震災復興支援に関するポスターの展示・発表会

2014年度 ハンブルク日本文化祭招待参加

ハンブルク大学アジア・アフリカ研究所を会場にして毎年開催されているハンブルク日本文化祭(5月24日)に招待され、向島学会とその活動に関するポスターの展示発表会が開催された。

発表を行ったのは、明治大学大学院の陳利華・秋山菜保子・小花璃美の3名。向島学会の関係者へのヒアリングを重ね、"Outline of Mukojima"(Lihua CHEN)、"Art Events and Renovation of Vacant Houses"(NaokoAKIYAMA)、"Community Design with Countermeasures for Disaster"(Rimi OBANA)と題し、それぞれ英語と日本語で発表した。ポスターはそれぞれA0サイズにまとめて英語で説明した。

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ハンブルク大学に展示された向島学会のポスター 向島に関するプレゼンテーションが行われた会場