活動紹介 : アート部会 | 2015/02/20

墨東まち見世2009-2012
墨東まち見世アートプラットフォーム

NPO法人向島学会では、東京都、公益財団東京都歴史文化財団・東京文化発信プロジェクト室との共催により、「東京アートポイント計画」の一環として、2009年度から2012年度に渡り「墨東まち見世」を、続く2013年に「墨東まち見世」アートプラットフォームを開催しました。

〈墨東まち見世〉は、それまでの向島のまちづくりとアートの活動を背景に、主に曳舟、東向島、京島、八広、押上エリアにまたがる、向島地域のほぼ全域を対象にしたアートプロジェクトとして企画されました。プロジェクトの名称の「墨東」は、地域内にある向島という町名との混同を避けるため、向島学会の定義する「向島」を「墨東」と呼び換えたものです。

「まち見世」という名称には、単にアートという言葉だけでは包括できない、まちづくりまでも含めた複合的な活動というニュアンスを含めています。〈墨東まち見世〉では、運営形態、開催方式ともに、毎年の反省を活かして少しずつバージョンアップしながら、4年間で実に多種多様な取り組みを行いました(その詳細については、2013年に発行されたドキュメントブック『墨東のまちとアートプロジェクト』をご参考ください)。特に2010年度からは、プロジェクトのミッションを(1)地域資源を活かした新しい文化情報の発信、(2)地域の担い手や拠点の育成とネットワークづくり、(3)地域の抱える課題の共有、以上の3点に集約して活動を行いました。さらに4年間の〈墨東まち見世〉の活動成果をふまえ、向島におけるアートとまちづくりのプラットフォーム形成事業として、2013年に〈「墨東まち見世」アートプラットフォーム〉を実施しました。向島学会では、主に参加者の自発性と相互のネットワークを育むという観点から、活動全体のボトムアップな運営を心がけ、様々な調整に当たりました。

〈「墨東まち見世」アートプラットフォーム〉の終了後、向島学会理事会では、東京アートポイント計画とともに2009年から取り組んで来た一連の活動が、ひとまず当初の目的を達成したと判断し、2013年度をもって共催事業を「卒業」することになりました。共催事業終了後も〈「墨東まち見世」アートプラットフォーム〉の活動は向島学会で継続し、主にウェブサイトの運営を通して、向島エリアの様々な情報の発信に努めています。

墨東まち見世2009  -まちが遊ぶ100日間-

  • 会期:2009年9月1日〜12月9日
  • コア期間:2009年11月21日〜12月6日
  • 会場:主に曳舟・京島・東向島・八広・押上エリア

プロジェクト実施までの準備期間も少なかった初年度では、向島学会のアート部会が中心に事務局を立ち上げ、東京アートポイント計画とともに、17組の参加アーティストの選定を行いました。とりわけコア期間には広いエリア内において、商店街、空き家、ギャラリー、アーティストのアトリエ、廃校、公園などを使い、同時多発で展示やイベントが行なわれるため、経験不足の事務局では運営に四苦八苦しましたが、意欲的なサポーターたちの活躍によって、無事会期を乗り切ることができました。プロジェクトでは、これまで向島に関わって来た様々なアーティストも多数参加し、それぞれ墨東地域をテーマに、展示、ワークショップ、スタジオプログラムなど、多種多様な活動を行いました。また、ウェブサイトやポスター、のぼり旗などのほかに、イベントのチラシを配布するためにインフォメーション用の屋台を制作、サポーターが引いてまちなかを歩くなど、ユニークな広報活動も行いました。ほかにも、若手アーティストのスタジオがネットワークに加わったこと、サポーターによる自主イベントの開催など、翌年の活動の布石となる様々な出来事がありました。

machi_2009_yatai.JPG
インフォメーション屋台

machi_2009_roji.JPG
京島路地園芸術祭

墨東まち見世2010 -ハロー、ニュートーキョー!-

  • メイン会期:2010年10月2日〜11月23日
  • 会場:主に曳舟・京島・東向島・八広・押上エリア

コア期間を設けず、ほぼ通年の活動となった2年目の「まち見世」では、さらに地域主導の活動とするべく、地域住民、アーティスト、アート拠点関係者などに広く呼びかけ、企画の運営を参加者が検討する「企画会議」を立ち上げました。「企画会議」は定例で開かれ、キャッチコピーからメイン会期における参加企画の選考方法まで、全員で意見交換をしつつ決定。メイン会期の「ネットワークプロジェクト」には20組の参加企画が墨東エリアで様々な活動を行い、中にはアート拠点の立ち上げをプロジェクト化して参加する企画も現れました。一方事務局でも、初年度にサポーターだったメンバーなどに声をかけ、スタッフの拡充を行うとともに、通年で行う演劇プロジェクトのために向島百花園の近くに借りた古民家を、事務局拠点やメイン会期中の案内所として活用しました。事務局ではレンタサイクルを行ったほか、「まち見世」の広報にかわら版の制作なども実施しました。またこの年から、まちとアートを学ぶ連続の講座シリーズ「墨東まち見世塾」と、ユニークな視点でのまちあるき「墨東まち見世さんぽ」という2つの定番企画が始まりました。さらに向島初体験のアーティストの招聘プログラム「100日プロジェクト」もスタート、メイン会期には池田光宏が「チャレンジスポット!鈴木荘」や古民家を使った「By The Window 墨東バージョン」を、2011年3月に山城大督が京島のマンモス公園などを舞台とした「トーキョー・テレパシー」をそれぞれ実施しました。(3月11日の東日本大震災の影響で、2回目の100日プロジェクトは会期途中で中止となりました。)

machi_2010_kaigi.JPG
企画会議

こすみ図書ワークショップ:machi_2010_tosho.JPG
こすみ図書ワークショップ

墨東まち見世2011 -気がつけば、お向かいさんはアーティスト-

  • メイン会期:2011年10月21日〜11月23日
  • 会場:主に曳舟・京島・東向島・八広・押上エリア

3年目の「まち見世」は、引き続き「企画会議」と「事務局」という仕組みによって運営されました。「ネットワークプロジェクト」では、企画案を提出しプレゼンを実施することを参加条件として、よりゆるやかに参加者を募り、前年と同じく20のプロジェクトが参加。一部企画では東日本大震災のチャリティーも行われました。また、アーティストではない地域住民による企画も複数登場するなど、プロジェクトの内容もさらに広がりを見せました。事務局では、鳩の街通り商店街の「チャレンジスポット!鈴木荘」2階に拠点を設け、メイン会期中の案内所や、展示・ワークショップの会場として使用。空き部屋をスタッフで大掃除し、壁塗りなどをして手作りで事務局スペースの準備を行いました。「企画会議」や「墨東まち見世塾」の開催にあたっては、向島に増えて来たアート拠点を使用させていただくことで、拠点相互の交流もより深まる結果となりました。また「100日プロジェクト」では、谷山恭子が東日本大震災の被災地を訪れた経験を元にした「lat/long-project I'm here.ここにいるよ」を2012年3月に実施、地域の洋品店、和菓子屋、喫茶店、向島百花園などに参加いただいたほか、墨田区役所や地元町会などのご協力を得て、2箇所の公園で作品の制作を行うことができました。

企画プレゼン会:machi_2011_presen.JPG
企画プレゼン会

墨東まち見世塾:machi_2011_juku.jpg
墨東まち見世塾

墨東まち見世2012

  • メイン会期:2012年10月19日〜11月25日
  • 会場:主に曳舟・京島・東向島・八広・押上エリア

地域アートプロジェクトとしては最後の年となった「墨東まち見世」においても、「企画会議」と「事務局」の仕組により運営されました。この年の「ネットワークプロジェクト」では、「まち見世」の主催する4つの「特別企画」と、企画団体の主催する15の「参加企画」を実施しました。これらの企画の選考方法の検討や実際の選考も、例年通り「企画会議」に参加しているメンバーによって行われました。この年の事務局拠点は、初年度に用いた京島キラキラ橘商店街に面した空き店舗を再び使用し、メイン会期には案内所およびスタッフ拠点としてオープンしただけでなく、「企画会議」や「墨東まち見世塾」の会場としてもフル稼働しました。また最終年にふさわしく「まち見世塾」では、地域アートプロジェクトの意味について改めて再考するシンポジウムを行ったほか、メイン会期が終了して2ヶ月後には、参加者を集めて別途「振り返り会」を開催しました。「100日プロジェクト」では、廃業する地元の銭湯をテーマに新里碧が「曳舟湯怪」プロジェクトを実施、メイン会期には営業中の向島の14箇所の銭湯に作品を設置しました。さらにこの年は、エリア内の拠点や団体を解りやすく紹介するため、メイン会期のチラシとは別に、「Boku-to-TekuTekuまちみてマップ」の制作を2回行ったほか、橋本誠を編集長に、講座事業を平行して実施しながら、参加者が編集の基本をワークショップ的に学びつつ、通年で「墨東まち見世」の報告集の制作を行う「墨東まち見世編集塾」も活動しました。「報告集」は、2013年3月に「墨東のまちとアートプロジェクト[墨東まち見世2009-2012ドキュメント]」として発行されました。

墨東まちみせ案内所:machi_2012_annnai.JPG
墨東まち見世案内所

machi_2012_closing.JPG
墨東まち見世クロージングパーティー

墨東まち見世アートプラットフォーム

  • 日時:2013年11月2日(一部イベントは11月1日開催)
  • 開催場所:キラキラ会館(京島キラキラ橘商店街内)および墨東エリアでのまちあるき

「墨東まち見世」の4年間を通し、向島にはアート拠点や活動団体が増え、様々なプロジェクトが日常的に行われるようになりました。「まち見世」終了後も、こうした担い手間のネットワークを維持発展させてゆくため、向島学会ではアート部会の一環として「墨東まち見世」部会を立ち上げ、地域のまちづくりとアートのプラットフォーム事業として、「墨東まち見世」アートプラットフォームを行うことになりました。「プラットフォーム」事務局では最新版の「まちみてマップ」の制作に地域の意見を反映させるため「マップの会」を開き、昨年までの「企画会議」のメンバーが参加しました。またマップの完成に合わせ、11月2日に、まちあるき・シンポジウム・交流会の複合イベント〈ボクらのこれから2013〉を開催。「マップの会」のメンバーが中心となり、企画運営に当たりました。全部で5本のまちあるきの後、キラキラ会館で開かれたシンポジウムでは従来から向島地域とも交流の深い尾道から、「尾道空き家再生プロジェクト」代表の豊田雅子さんをゲストに、その活動について伺うとともに、来場者を交えて活発な意見交換を行いました。またシンポジウム後には同じ会場で、地元の商店やカフェから取り寄せたメニューを囲み、賑やかにパーティーが開かれました。なお、事務局では2013年3月に「まちみてマップ」の英訳版を制作。地域情報発信のためのウェブサイトのリニューアルも行い、それをもって2013年度の活動の終了となりました。

プラットフォーム・ボクらのこれから・シンポジウム:platform_korekara_sympo.JPG
プラットフォーム・ボクらのこれから・シンポジウム

platform_korekara_donnnai.JPG
プラットフォーム・ボクらのこれから・ドンナイ