アートスポット鳩や
向島学会アート部会では、地域との関わりを通じて新しい価値の創造を行うアートプロジェクトに取り組んでいます。ここでは2008年から20013年にかけて行われた拠点形成事業「アートスポット鳩や」についてご紹介します。
鳩の街通り商店街の中程にある「チェレンジスポット!鈴木荘」。2008年春から、鳩の街通りの活性化を目的に、商店街が空き家になった店舗兼アパートを1棟まるごと借り上げ、鳩の街でお店舗やアトリエを持ちたいという人たちに貸し出しています。
向島学会アート部会では2008年から2013年まで、この鈴木荘2階の四畳半の一部屋を拠点として、「アートスポット鳩や」を運営しました。「鳩や」では、商店街に面した立地と小回りの効くスペースの特色を活かし、スタジオプログラム、展覧会、映像上映、ワークショップ、アートプロジェクトのミーティング、そして時にはこたつを囲んだ鍋の会など、地域に開かれた様々な活動を行いました。
鳩や入口 |
2013年秋、拠点としての「鳩や」の活動はいったん終了となりましたが、アーティストと地域が出会う場の提供、まちの日常とアートの距離を近づけること、そして自律的で持続的に運営可能な無理のない仕組みという発想に立った「鳩や」の活動は、その後の「墨東まち見世」のプロジェクトを経て、現在の向島地域における多様なアート拠点やまちづくりの実践の中に引き継がれていると感じています。
「鳩や」がスタートした際、アート部会として最初に行ったのが「スタジオプログラム」でした。2008年10月に小林史子、同年12月から翌年3月にかけて三宅航太郎と、向島初体験の二人の若手アーティストを連続して招き、「鳩や」をスタジオとして使用してもらいながら、地域をテーマにアートプロジェクトに取り組んでもらいました。二人のアーティストには、スタジオプログラムの期間の最後に、成果報告展示を行っていただきました。
小林史子
- スタジオ期間 2008年10月(1ヶ月)
- 成果報告展示 2008年10月24日(金)、25日(土)、26日(日)
小林史子さんは、商店街の様々なお店や幼稚園などに声をかけて大量の椅子を集め、狭い「鳩や」室内に天井まで届く壁のようなインスタレーション作品を制作しました。小さな部屋にまちの空気感が漂う、濃厚な作品となりました。「鳩や」はスタートしたばかりで、まだリフォーム前の試運転のような段階。スタッフの準備もあまり整わない中、1ヶ月という短い時間の中で、ギュッと濃縮された作品にまとめあげたアーティストの力量に驚かされました。小さなスペースでも、これだけ充実した表現ができるのだと、改めて目を開かされた思いでした。
三宅航太郎 「向島おしょくじプロジェクト」
- スタジオ期間 2008年12月−2009年3月
- 成果報告展示 2009年3月8日(日)-3月15日(日)
2回目のスタジオプログラムは、ファイルでの公募審査で選ばれた三宅航太郎さんが、岡山から参加。年末年始を挟んだ3ヶ月に渡るスタジオ期間に、向島地域の60軒に及ぶ飲食店に声をかけ、食のおみくじ「おしょくじ」を制作しました。「鳩や」を「おしょくじ営業所」として、地域内外から20名を数えるサポーターを集め、巧みなマネジメントで見事プロジェクトをやり遂げました。成果報告点の会期中には「出張おしょくじ」として、実際に協力を得た店舗に食事に出かたり、サポーターのトークイベントを行ったりと、プロジェクトを通して多様な人のつながりが生まれ、プロジェクト終了後も「おしょくじの会」として続いて行きました。向島学会でも、そうしたつながりをバネとして、2009年に「墨東まち見世」の活動を始めることになります。アーティストの発想が地域と化学反応することで、まさに思いも寄らない可能性を見せてくれたプロジェクトでした。
「アートスポット鳩や」ではその他にも様々な活動が行われました。その一部は以下のウェブサイトでご覧になれます。
http://hatoya.exblog.jp
eおのみち屋(2008年5月、11月、2009年5月) | 向島アートのまち 写真ワークショップ成果報告展(2009年4月) |
佐藤いちろう ワークショップ(墨東まち見世2010) | 一生の一冊(墨東まち見世2011) |
パルコキノシタ ワークショップと展示(墨東まち見世2009) |